平戸産イトラッキョウ
私の短歌の師である春日井 建先生が他界されて、まもなく6ヶ月が過ぎようとしています。
体調が優れないことは毎月発行される「結社誌」でも存じ上げていたが、最後まで講演などをなさっているご様子にどこか安心感のようなものを持っていただけに、喪失感は大きいものでした。
建先生の精神性の豊かさ、他を許さない文学的な高さを知りえたことは、私にとって生涯忘れ得ないことです。
20年前に、「中部短歌会」に入会させていただいて、お母様の政子先生に添削をしていただくことにしました。
短歌を始めて間もない私の短歌にもあまり手を加えることなく、さりげなく書いて下さる一言が嬉しくて、やさしいお言葉に導かれながら、学んでいたのですが、先生が「もう添削はしなくてもよいでしょう。」と書いてくださったのにもかかわらず、再度お願いして数ヶ月は添削をしていただいたことも思い出されれます。
その中に「建もこんなことを言っていました」などとも書いてくださることもあり、とても嬉しかったのを覚えています。
建先生主幹の「中部短歌会」は自由な気風に満ちていて、建先生の歌集「未成年」を読んで入って来られる若い方も沢山おられ、刺激を受けることの多い結社でした。
建先生の歌集「白雨」「友の書」が迢空賞と日本歌人クラブ賞を受けられたのを見届けられ、政子先生は平成13年12月享年94歳11ヶ月で心不全でご逝去、建先生より2年5ヶ月早く旅立たれていました。
その歌集に収められている、お母さまを詠んだ、次の2種は、お二人から受けたやさしいお心と、表現の自在さ、美しさを思い起こさせてくれるかけがえのない思い出深い歌となっています。
鴨のゐる春の水際(みぎわ)へ風にさえつまづく母をともなひてゆく
夏茜ついととびきて川の辺に杖つく母の先達(せんだつ)となる
2004.11.18 記