プリムラ・ヒルスタ
年老いた母と私たち姉妹夫婦で中華料理屋さんに行ったときのことでした。
連休の昼食時、混雑していたので2階の席にと案内されました。
杖を突いている母が二階に上がれるのだろうかとちょっとためらっていたときです。
奥のほうから、「こちらが空きますよ。」と大きな声をかけて下さる方がいました。
そちらのほうに行ってみると年配の女性二人がまだ食事中でした。
母を二階まで連れて行くのは、少しためらわれたので、お言葉に甘えて待たせていただくことにしたのだが、声をかけてくださった方はさっさと食事を済ませ、テーブルまで片つけて席を空けてくださり、食事中のもう一人の方を尻目に座敷の席から降りて、色々と話しかけてこられました。
私は母よりもずっと若い方と思っていたが、母を見て「私より若いでしょう。」というのであっけにとられていたら、「私87歳なのよ」と言う。
母は85歳、なるほど年齢は母の方が若いがとても母より年齢が上だとは思えない若い立ち居振るまいでした。
そんなことを話していると、ここのお店は気に入っているので時々来られるとのこと、そのとき店の前の道路で交通事故にあってしまったが、それがなかったらもっと元気だったのだと言う。
ひき逃げだったらしくまだ犯人は見つかっていないとのこと、「でも私はひき逃げした人のことを気の毒に思うの。ずっと心に重荷をもって生きていかなければならないでしょう。」と、こともなげに言うことことばに、素晴らしい年輪を重ねてこられた方だとしみじみと思わされた。
心も温かく頂いた食事はとても美味しく、母はその日一日をとても満足して帰っていきました。
2005.05.05 記