イワカガミ
春先から6月にかけては、山野草の植え替え、蘭類の植え替え、皐月の剪定、植え替えと花に酔いながらの忙しさです。
6月の末、庭仕事も一段落する頃、不思議と栗駒のイワカガミを思い出します。
栗駒山にはイワカガミが多い。それもイワカガミ平と名づけられている宮城県側ではなく、岩手県の須川温泉から登るコースのほうで、登り口付近からイワカガミの群生を見ることが出来ます。
須川温泉付近には、遊歩道がいくつも廻っており、名残が原の湿原を抜けて登山道を逸れ、遊歩道に入って行くと、ほどんと草木もない礫地になっていて、まだ雪が残っている岩の間を染めるように、イワカガミの群生があります。
見渡す限りのイワカガミに、身もこころも染まるように岩の上に腰を下ろし、ひんやりと清々しい空気のなかに身をゆだねると、言葉のない世界に迷い込んだような気分になってきます。
このあたりはツガザクラやミネズオウなど小さな花ばかりなので、イワカガミの暖かいピンクが、今解けている雪の中から岩を縫うように染めている様は、何度でも訪れてみたくなる光景で、いつしか私たちの心の原風景のようになっていました。
しばらくの休憩の後登山道に戻り、所々雪の残っている道を登って行くと、昭和湖に着きます。
登山道にもイワカガミは咲いているが、昭和湖の廻りもイワカガミの群性になっていました。
ラタマノキが目立たない花を沢山咲かせているのを、秋の実りの頃の風景をこころに描きながら昭和湖に目をはせると、火山湖特有のコバルトブルーは魂を抜かれるかと思う程の色に静まり返っています。
昭和19年の爆発で出来た湖だそうです。
遁れきし山にあらねど魂を沈めしごとき蒼き火口湖
趣味の短歌より
2002.08.22 記